2013年10月30日水曜日

祈りのチェロ

現在、チェリストのヨーヨー・マ さんが来日されていらっしゃるようですね。
彼は 東日本大震災の直後から「フォー・ザ・ピープル・オブ・ジャパン」と銘打ったプロジェクトを いち早く立ち上げ、世界中にいる友人たちに自ら連絡をとり、
「勇気を失ったり悲しみにくれている人に、悲劇に立ち向かう力を与えよう。日本へ パフォーマンスを届けよう」
と呼びかけてくださいました。
今回 10月29日夜、東京のサントリーホールで行われた演奏会。
そのアンコールで使用されたチェロは、東日本大震災の津波で流された住宅の柱などを使って作られたものだそうです。
チェロの内部には「魂柱」という重要な部分があるのですが、その「魂柱」には、岩手県の陸前高田市の海岸で 津波に流されずに1本だけ残った「奇跡の一本松」が使われているそうです。
ヨーヨー・マさんはそのチェロで「鳥の歌」を演奏し、震災の犠牲者を追悼してくださったということです。
「鳥の歌」は、スペインのチェリスト、パブロ・カザルスが カタルーニャ民謡を編曲したもので、故郷への思いや 平和への祈りが込められた曲です。
私はカザルス自身が、ケネディ大統領の招きにより、ホワイトハウスの舞踏室で演奏したCDを持っています。
カザルスは、スペインがフランコの独裁政権下に入って以降 「二度と故国に帰らない。その政権を承認する国では絶対に演奏会を開かない 」という信条がありましたが、「平和を希求するケネディ大統領の前ならば…」と、ホワイトハウスの招きに応じました。これは その際の録音です。
不朽の名演だと思います。
メンデルスゾーンのピアノ三重奏から始まる(これも本当に素晴らしい!)その演奏会の最後に演奏された「鳥の歌」…
心に深く染み入ります。
晩年のカザルスは、この曲を好んで演奏しました。
1971年の国連で行われた演奏会でも、
「カタロニアの小鳥たちは、青い空に飛び上がると ピース・ピース と言って鳴くのです。」
と、紹介しました。
私はチェロの音が大好きです。チェロの音域は 人の声の音域とちょうど重なると言われていますが、低い音から高い音まで 弦が深く響きます。そして 優しく語りかけられる感じがして、とても癒されます。特に夕暮れ時に静かに聴くチェロの音には魔力があるような気がします。
今回の 「ヨーヨー・マ演奏による鳥の歌」…まさに 祈りのチェロですね。


4 件のコメント:

まきちゃん さんのコメント...

私と夫も先週、サントリーホールに行きましたよ!
あおいみみずくさんは「弘法筆を選ぶもん!(ピアノのこと)」と前におっしゃっていましたが、最近私は「ホール」も楽器の一部じゃないかと思っていて、良い響きのホールで弾きたいなあ、と思っています。サントリーホールはいつも音に感動します。マレー・ペライアのリサイタルでしたが、とてもよかったです!

あおいみみずく さんのコメント...

まきちゃん!コメントありがとうございます。
マレー・ペライア!素敵ですね。ペライアの音はとても綺麗ですが、ホールの音響もあいまって、本当に美しい響きだったことでしょうね。
ご夫婦でお出かけになったとは、何とも羨ましい!仲良く名演に耳を傾けられている姿が目に浮かびます。なんだか懐かしい昔にも目にしていたような…

ゲンゴロウ さんのコメント...

ヨーヨー・マといえば昔、ベートベンのチェロソナタ(ピアノ;エマニュエル・アックス)のCDを聴いてこんなに華やかな演奏もあるのかと思った記憶があります。どちらかといえば
静かで内省的な響きが主流の中で、ジャズを思わせる響きがとても斬新に思えました。馬を思わせる優しい長面で、行動的で音楽の分野を超えた活躍もしているようですね。大好きな音楽家の一人です。私の記憶が正しければNHKの
シルクロード第2部のテーマ曲にも彼の作曲し
たものが使われています。現代的で尊敬できる
奏者だと思います。

あおいみみずく さんのコメント...

ゲンゴロウさん、コメントありがとうございます!
ヨーヨー・マの演奏は、確かに華やかですよね。華やかですし、おおらかな感じでもあります。ジャズやタンゴなど、ジャンルの異なる音楽に 積極的に挑戦されている姿も良いですよね。おおらかすぎて、以前 ニューヨークでだったでしょうか…タクシーの中にチェロを忘れて来てしまった事もあったような…(ー ー;) そんな人間らしい(?)トコもまた好感が持てたりします。
シルクロードにも使われているんですか!今度捜してみます!