2016年2月5日金曜日

新春!歌舞伎の幕見は面白いー2

つづき
初めて幕見席で観る歌舞伎。前日に突然思いつき、二演目のみの鑑賞でしたが、思った以上に良いものでした。
まずは「梶原平三誉石切」
あらすじをここでご紹介すると あまりにも長くなるので割愛しますが、この幕の主役「梶原平三景時」は、品格があり 智恵と勇気のある素晴らしい武将として描かれています。
今回の演者は人間国宝 中村吉右衛門さん。平成元年から平成13年まで 鬼平犯科帳で長谷川平蔵を演じられていたのが 記憶に新しいところです。そんな吉右衛門さんの風格がまさにものを言う役どころ。型をバチンと決めて 目を見開いて見栄を切る。客席から掛け声がかかり 会場全体が一体化して盛り上がる…という まさに これぞ歌舞伎!といった感じの演目。新春にスカッとできて元気が出ました。
この 客席からの掛け声を「大向こう」と言うのですが、これって 幕見席にいらっしゃる方々がかけるんですね。この席は天井に近くて声が通りやすいからという事。また、前方の席の方が声をかけるのは、後ろの席が のけ者になった感じがするという事で御法度らしいですよ。劇場の後方から観客が支援し、会場全体の一体化を図るといったところでしょうか。
大向こうは タイミングが大事ですから、幕見席に何回も通い タイミングの練習を積まれるんでしょうね。こういった事からもわかる様に、この幕見席は 舞台も客席も含めた劇場内全体の雰囲気が肌で感じられる所なんです。


さて、次の演目「茨木」
あおいみみずくは、高校生の時よりの隠れ坂東玉三郎ファン。当時 登下校の道すがら、地下街の柱に貼ってあった大きな玉三郎さんのポスターを見て「なんて美しい役者さんなんだろう…」って感動して以来の 憧れです。
一昨年 京都の南座で母と一緒に「アマテラス」という舞台を観劇したのですが、この時の玉三郎さんは舞台にはお出になったものの、ちょっとプロデューサー的要素が強かった様に感じられ…つまり、ほとんど踊らなかった…f^_^; なので、今回、本格的な歌舞伎での彼の舞を観る事が出来て、最高に感激!!
こちらもまた さすがの人間国宝。いやもう、それはそれは素晴らしいものでした。
先ほど「会場全体の雰囲気が肌で感じられる」と書きましたが、それこそ 彼が登場すると 観客が一斉に息を呑む音がして…。視線はもちろん、誰もが身を乗り出してその登場に集中するのです。残念なことに 幕見席からでは 揚幕からの花道 3分の2ほどは見えません。今回 玉三郎さんは花道からの登場だったので、出の瞬間は観る事が出来なかったのですが、今まさに姿が見えたであろう瞬間をしっかりと「感じる」事ができました。凄い!
今回 彼の役どころは「鬼女」
花道を通ってゆっくりと舞台に近づいて来るのですが、その間 全く頭が揺れない!つまり本当にこの世のものとは思えない といった唯住まい。人間の移動とはとても思えません。
また、特筆すべきはその台詞まわし。鬼とはいえお婆さんの姿。最初はその正体を隠して哀れを誘い、閉ざされた門の中に入れてもらおうと画策しての役回りです。悲しげに「なんで私をこんなに邪険に扱うのか?この門を開けておくれ…」と、か細い声で訴えるのですが、その小さな声が4階席のみみずくの席まではっきりと凛として届くのです。歌舞伎独特の節回しと その余韻までもがはっきりと聞こえ、これにはただただ感服。役者さんの中には 大きな声を張り上げるものの、こちらまで はっきりと届かない場合もありましたが、あんなに小さな弱々しいはずの鬼女の声、すべて漏らさず受け取る事ができました。まさに名人技と言えると思います。発声の方法なのか何なのか…
踊りも気品がありたおやかで美しく、本当に期待に違わぬ…いえ、期待以上!満喫してしまいました。何て幸せな時間!
ああ、本当に嬉しい年初め。きっと今年も楽しいことたくさんありそうです。


大いに楽しめた歌舞伎の幕見。ただ一つご注意は、オペラグラスは必需品^_−☆(歌舞伎座内でも千円で売ってはいます)
あーでも、玉三郎さんの舞台はやっぱり一度は かぶりつきで観てみたいかも(^ ^)