つづき
初めて幕見席で観る歌舞伎。前日に突然思いつき、二演目のみの鑑賞でしたが、思った以上に良いものでした。
まずは「梶原平三誉石切」
あらすじをここでご紹介すると あまりにも長くなるので割愛しますが、この幕の主役「梶原平三景時」は、品格があり 智恵と勇気のある素晴らしい武将として描かれています。
今回の演者は人間国宝 中村吉右衛門さん。平成元年から平成13年まで 鬼平犯科帳で長谷川平蔵を演じられていたのが 記憶に新しいところです。そんな吉右衛門さんの風格がまさにものを言う役どころ。型をバチンと決めて 目を見開いて見栄を切る。客席から掛け声がかかり 会場全体が一体化して盛り上がる…という まさに これぞ歌舞伎!といった感じの演目。新春にスカッとできて元気が出ました。
この 客席からの掛け声を「大向こう」と言うのですが、これって 幕見席にいらっしゃる方々がかけるんですね。この席は天井に近くて声が通りやすいからという事。また、前方の席の方が声をかけるのは、後ろの席が のけ者になった感じがするという事で御法度らしいですよ。劇場の後方から観客が支援し、会場全体の一体化を図るといったところでしょうか。
大向こうは タイミングが大事ですから、幕見席に何回も通い タイミングの練習を積まれるんでしょうね。こういった事からもわかる様に、この幕見席は 舞台も客席も含めた劇場内全体の雰囲気が肌で感じられる所なんです。
さて、次の演目「茨木」
あおいみみずくは、高校生の時よりの隠れ坂東玉三郎ファン。当時 登下校の道すがら、地下街の柱に貼ってあった大きな玉三郎さんのポスターを見て「なんて美しい役者さんなんだろう…」って感動して以来の 憧れです。
一昨年 京都の南座で母と一緒に「アマテラス」という舞台を観劇したのですが、この時の玉三郎さんは舞台にはお出になったものの、ちょっとプロデューサー的要素が強かった様に感じられ…つまり、ほとんど踊らなかった…f^_^; なので、今回、本格的な歌舞伎での彼の舞を観る事が出来て、最高に感激!!
こちらもまた さすがの人間国宝。いやもう、それはそれは素晴らしいものでした。
先ほど「会場全体の雰囲気が肌で感じられる」と書きましたが、それこそ 彼が登場すると 観客が一斉に息を呑む音がして…。視線はもちろん、誰もが身を乗り出してその登場に集中するのです。残念なことに 幕見席からでは 揚幕からの花道 3分の2ほどは見えません。今回 玉三郎さんは花道からの登場だったので、出の瞬間は観る事が出来なかったのですが、今まさに姿が見えたであろう瞬間をしっかりと「感じる」事ができました。凄い!
今回 彼の役どころは「鬼女」
花道を通ってゆっくりと舞台に近づいて来るのですが、その間 全く頭が揺れない!つまり本当にこの世のものとは思えない といった唯住まい。人間の移動とはとても思えません。
また、特筆すべきはその台詞まわし。鬼とはいえお婆さんの姿。最初はその正体を隠して哀れを誘い、閉ざされた門の中に入れてもらおうと画策しての役回りです。悲しげに「なんで私をこんなに邪険に扱うのか?この門を開けておくれ…」と、か細い声で訴えるのですが、その小さな声が4階席のみみずくの席まではっきりと凛として届くのです。歌舞伎独特の節回しと その余韻までもがはっきりと聞こえ、これにはただただ感服。役者さんの中には 大きな声を張り上げるものの、こちらまで はっきりと届かない場合もありましたが、あんなに小さな弱々しいはずの鬼女の声、すべて漏らさず受け取る事ができました。まさに名人技と言えると思います。発声の方法なのか何なのか…
踊りも気品がありたおやかで美しく、本当に期待に違わぬ…いえ、期待以上!満喫してしまいました。何て幸せな時間!
ああ、本当に嬉しい年初め。きっと今年も楽しいことたくさんありそうです。
大いに楽しめた歌舞伎の幕見。ただ一つご注意は、オペラグラスは必需品^_−☆(歌舞伎座内でも千円で売ってはいます)
あーでも、玉三郎さんの舞台はやっぱり一度は かぶりつきで観てみたいかも(^ ^)
6 件のコメント:
御無沙汰しています。
みみずくさんの感動が伝わってきます。良い経験をされたようですね。
会場全体の一体化(やはりその場所で、観たり聴いたりすることで演者と、呼吸を共にする事が出来るのでしょう)
歌舞伎、音楽会、落語等にも言えることでしょうね。
その点家でテレビで見ても、少しもの足りなく思いますもの。
それに小さい声、弱音を如何に綺麗に弾くかとも通ずることでしょうね。
私も観てみたくなりました。
わたしは、幕見席、天井桟敷、スタンド後方立ち見席、大好きですよ!通は全体の雰囲気を観るんですよ。なーんて、セレブに嫁いでかぶりつき三昧、とはいかなかったものの負け惜しみ? それにしても、玉三郎様 一度は観てみたいです。
エーデルワイスさん、お久しぶりです。コメントありがとうございました!
ピアノは(多分、歌も)小さな音を表情を持って ガタつかせず いかに会場の隅々まで通すかという事に技術の差があらわれる様に思います。
勿論、大きな音も、響く音とグシャリと聴こえる音の差というものは 激しく感じますが…
何れにしても、後方の隅の席というのも なかなか面白い場所ですね^ ^
以前、アシュケナージが弾くショパンのバラード4番を東京文化会館で聴いた時、一番安い席でしたが 信じられないような音の美しさに大感激して それこそ涙で前が見えないほどでした。でも その演奏会を同時中継していたラジオを録音したものを後で聴いた時は…全く別ものでした。
会場の片隅であっても、やはり現場で味わうのが一番ですね^o^
モモンガさん、コメントありがとうございました!
そうそう!セレブに嫁いでかぶりつき三昧…f^_^;) ではないからこその通の楽しみ♡ ですよね〜
何事も 恵まれすぎは 良さがわからなくなる…というか、多少我慢してこそ喜びも深くなるし、良さに対して敏感になると^_−☆
今度幕見席、ご一緒しましょ。
ただ、玉三郎に関しては、死ぬまでに一度は大きく見える所で観てみたいかも〜
歌舞伎貯金しようかなぁ…って考え中です。
あおいみみずくさま、こんばんは。
今日は1年ぶりにご一緒させて頂きまして、誠に有難う存じました。
キラキラの音の粒を拝聴し、「みみずくさま、ご健在!」と大変嬉しく存じました♡
演奏会終了後、本記事を拝読。
玉様の発声の域に達するまで、私は一体何度転生を繰り返すのやら...orz
考えただけで氣が遠くなりました。が、その1歩を踏み出せたことに感謝したいと思います。
どんなに小さくても、1歩は1歩です!(←自分への言い訳)
落語もいいですねぇ...☆
いつか新宿末廣亭、ご一緒してやって頂ければ幸いです♡
お疲れの出ませんよう、どうぞご自愛下さいませ。
富士の白雪
富士の白雪さん、コメントありがとうございました!
昨日はお会いできて、本当に嬉しかったです。青いドレスに青い鳥の羽根のイアリング♡アンサンブルも、とても素敵でした!
私の方はと言うと、近頃あまり人前で演奏していないせいか、心の乱れが指に伝わり 音が上ずってしまい、かなり悔しさ残るピアノだった様に思います…>_< 小さな音でのコントロールはやはり難しいですね…ああ、玉様の偉大さがわかります…でも、仰る様に一歩一歩に感謝ですね^ ^
ところで…そう!このところ日本文化に溢れる毎日なのですが、先日、落語会というものに初めて行って来たんですよ!
以前から行ってみたいと思っていたのですが、思った以上に楽しめました。語りだけでお客さんの感性をあれだけ刺激させる…まさに「話芸」といった感じ。またそのうちブログにも書こうと思うのですが、演目もとても良かったです。特に「紺屋高尾」という演目の一途な純愛には泣けました。近頃 巷に氾濫しているドロドロゴタゴタを思う時、それこそ「"Mache dich, mein Herze, rein."」です!!ああ、本当に!
末廣亭って、行ってみたいです。ぜひ今度、ご一緒に!!楽しみだなぁ♡
ではでは。またお会いしましょう!
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