2013年9月30日月曜日

青山の魔宴 最終回 〜吟遊詩人による

(前回からの続き)

そして肉料理が運ばれてきました。ワインは赤になります。新しいグラスに注がれたワインを前に、あおいみみずくは一瞬トランシルバニア地方の逸話を思いだしましたが、白ワイン同様、上質の赤だったのでホっとしました。


すると上の階からけたたましい悲鳴が聞こえてきました。マリネリスとギョームは跳ねるように椅子を立ち、先を争うようにして階上へ駆け上がって行きました。さくらが何か怖い目に遭ったのだと思い、恐ろしくなりました。

しばらくすると、マリネリスとギョームに守られながらさくらが姿を現しました。聞くところによると、さくらは開口部から建造物の中に入ることに成功したものの、天井に吊り下げられた大蛇のオブジェに驚いたとのことです。そしてその大蛇が天井から落ちて襲ってきたと言うのです。

しかしマリネリスもギョームも、大蛇のオブジェは最初と同じように天井にあったと言いました。いったいどちらが正しいのでしょう?そしてさくらは精神的ダメージを受けていないでしょうか。いろいろなことが私の頭をよぎり、混乱しました。



さくらは宝来先生の隣りに腰かけ、震えていました。しかしさくらがキャッチアップするために運ばれた紅白のワイン、前菜、魚料理を前に、落ち着きを取戻して食事を始めました。

そうこうするうちに、さくらも肉料理に追いつきました。私達はさくらを元気付けようと、いろいろな話題を出し、しばらくの間歓談しました。その甲斐あって、さくらは明るい顔を取戻しました。

ワインを飲み切り、デザートに移りコーヒーを飲んでディナーも終わりに近づきました。このまま何事も起きなければ良いのに、と思っていた矢先、何とも名状し難い事が起こりました。

禍々しい絵が掛かっていた周囲の壁が突然消滅し、漆黒の空間が広がったのです。しかも絨毯を敷き詰めた床も消え失せ、同様に暗黒の世界が広がっていました。天井も消え、月も星も無い真っ暗な虚空が見えるだけでした。


あおいみみずくは椅子から転げ落ちました。下方の暗闇に真っ逆さまに落ちてゆくのかと思ったら、身体はそこに床があるかのように支えられていました。さくらと宝来先生は抱き合って恐怖と戦っていました。
禍々しい絵が掛かっていた周囲の壁が突然消滅し、漆黒の空間が広がったのです。しかも絨毯を敷き詰めた床も消え失せ、同様に暗黒の世界が広がっていました。天井も消え、月も星も無い真っ暗な虚空が見えるだけでした。

マリネリスとギョームは必至になって服のポケットをまさぐり、紙片を取り出そうとしていました。そして二人とも何とか紙片を手にすると、恐怖で狼狽しながらも「ンサイタ ウヨリ クア!」という呪文を連呼し始めました。

しばらく目をつぶっていたあおいみみずくが恐る恐る目を開けると、そこはだいぶ前に人が住まなくなったと思われる廃墟でした。私達はその地下にいたのです。そこには厚手の絨毯も、暖炉も、シャンデリアも、絵画も何もありませんでした。ただただ廃材があちこちに散らばっているだけでした。


そこには私を含め4人が立ちすくんでいました。マリネリス、宝来先生、さくら、そして私・あおいみみずくです。何とギョーム・サボリネールの姿がありません。念のためあちこちの廃材を持ち上げて、下敷きになっていないかと探したのですが、ギョームはどこに消えたのか、見つかりませんでした。

マリネリスは「ギョームは悪霊の邪気にあてられ、4次元の世界に封じ込められたらしい」と言いました。「彼は死んだわけではない。しかしこの世界とは別の世界で囚われの身となってしまったのだ」と説明を加えました。

私達4人はその妖異なる場から逃れ、自宅に戻り、これまでの生活に戻りました。正義の経理マン、テッツ・パーカスも退院し、普段の生活に戻ったそうです。しかしギョーム・サボリネールだけは未だに行方不明です。でもいつか彼も培った法力を駆使し、この世界に戻ってきてくれると信じています。

私達の冒険はまだこれからです。なぜなら現在は「月島ロケット」の構想がやっと絞り込まれてきた段階なのですから。構想を固め、サロン「月島ロケット」を開設し、営業を始め、そこでメンバーが妖術を尽くしてギョームを救い出すのが今後私達に課せられた命題であり試練でもあるのです。

ギョームよ、待っていて下さいね。


おしまい

8 件のコメント:

ギョーム・サボリネール さんのコメント...

同志よ、我を助けよ。
我の呪縛を解く呪文は・・・
「シターレ、サンカ、キリヨ、イカーマ」。
蝋燭の前でこの呪文を10回唱えると
我は開放されるであらふ。

あおいみみずく さんのコメント...

えっと…蝋燭…蝋燭…
「シターレ、サンカ、キリヨ、イカーマ!×2!」

スナフキンIII世 さんのコメント...

えっ、最終回なんですね。
でも、まだ続くみたいなエンディングですよ、
半沢直樹みたいに・・・。

さて、では早速にろうそくの前で
「シターレ、サンカ、キリヨ、イカーマ」の10倍返しだ!
めでたく解放されましょうであらふませ?
ギョームさん、どうかご無事で!

あっ、それから写真の感じがえぐいですねー。
特に最後の写真は圧巻ですよっ ^^)/
本文の内容と相まっていい感じです。

また、続きを是非に。


エーデルワイス さんのコメント...

私は四次元の世界には、夢でしか行ったことがありません。
御馳走もたっぷり食べられたようですし、もう少しそちらの世界を知りたいので呪文は、反対から唱えることにしましょう。これでは脱出できませんね?!
これからを楽しみに、片目をつぶって読むことにします。
あおいみみずくさんの写真も、ぴったりコラボして、とても素敵です。四次元の世界への入り口そのもののような気がします。

あおいみみずく さんのコメント...

スナフキンさん、半沢直樹ですか! 私は連ドラは普段 あまり見ないのですが、これは見てました。俳優さん達の演技合戦の様でしたね。奥さんの役は上戸彩も良いけど、私的には深津絵里かな。
ところでギョームさん救出の為に、呪文をありがとうございました!ところが、エーデルワイスさんが、まさかの反対呪文を…!どうなっちゃうんでしょうかね?
最後の写真は、昨日、立川の昭和記念公園で撮ったものです。こんな所に四次元の入り口が!

あおいみみずく さんのコメント...

エーデルワイスさん、まさかの反対呪文!こうなると まだしばらくはギョームさん、四次元にいらっしゃる感じですかねぇ〜f^_^;
興味深い四次元リポートを、きっと何処かに送ってくださると思いますよ。受信場所が判明したら、こちらでもご案内させて頂きたいと思っています^ ^
ところで昨日、立川の昭和記念公園にコスモスの写真を撮りに行ったのですが、コスモスはまだ3分咲。で、代わりに四次元への入口を見つけちゃったのです!出口は何処にあるのかな?

多摩川亭おかみ さんのコメント...

ああ、すっかり遅れをとってしまいました・・・。ギョームさん、まだあちらの世界から戻ってきていないんですね。
シターレ、サキン、カテニ、イカーマ・・・

あれ?(笑)

あおいみみずく さんのコメント...

ありゃありゃ、多摩川亭おかみさんってば!
これじゃあますますギョームさんの帰還は遅くなりそうですね…( ̄◇ ̄;)
ところで、色々な業種の企業が共同でシェアハウスを運営するっていう情報をキャッチしました。各階に、サロンのような共有スペースをつくり、業種をまたいで意見交換できる様にする計画らしいのですが、そのシェアハウスの名前が、ナント「月島荘」なんですって!なんてこった!これも時空の歪みが成せる技なのでしょうか…(アームストロングの事もあるし…(ー ー;)