昨夜、ギシギシ…という掠れたような音と共に、それでも懸命に鳴いてくれていたのに…
朝、水を取り替える時に確認したら、生きてはいるのですが もう手足に力が入らないのか、止まり木に這い上った…と思ったらコロンって水の入れ物の中に落ち、あっぷあっぷしていて…
慌てて救助したら 餌の上に行き、一安心。
ヨロヨロしているから 命の終わりは近いのかもしれません。
この鈴虫達は 二週間ほど前、お茶の先生のお宅からやって来ました。
お稽古の最中、庭にある腰掛けあたりから何とも良い声が聞こえて来て…。つい お点前の手を止めて うっとり聞き入ってしまい、
「なんて素敵な声でしょう…」
と 思わず口にしたところ、
「主人が虫の音を聞く会に入っていて、毎年たくさん育てているから、良かったら持ってらっしゃい。」
と、わざわざお子さんが使っていた虫かごを探し出してくださって、餌までつけて 快く分けくださいました。
本当のところ、これまでかなり小さな時分にはカブトムシか何かを飼っていたような覚えがあるのですが、このところ虫なんて怖いばかりで、どうして良いかわからず…
とりあえず水と、頂いた餌を取り替え、霧吹きで 土と止まり木を湿らせ 直射日光に当てず…
すると ここが気に入って良い気分なのか 大きな声で機嫌良く鳴くのです。
最初は玄関に置いていたのですが、人が出入りする度にパッと点く電灯にびっくりするのか パタと泣き止み…またしばらくすると鳴く…
玄関ではかわいそう…?と、寝室に持って行ったり和室に置いたり。虫かごを抱えてあっちこっち。
こちらの苦労がわかるのか、本当に美しい声で、もう休んだら?っていうくらい 鳴いてくれました。
頂いた最初はまだ子供だったのかな?ぎこちなくリーンリーンと、やっと2セット。
それが日に日に3セット4セットと増え、誇らしく高らかに。
でも、一週間を過ぎたくらいからだんだん雑音が混じるようになり、音もガサガサになって来て…。それでも諦めずに一生懸命鳴くのですよ。一昨日はガサガサな声で2セット。
もうダメかなぁ?って思ったら、昨日はガサガサな声で4セット!
そして今朝は鳴きません。
命ある限り その時にでき得る限り一生懸命歌い、最後まで懸命に生きて鳴く…
この世の全てのものに仏性があると言いますが、本当にこんな小さな虫の生き方にも思わず感動させられてしまいます。
小さな虫かごに閉じ込められていて、彼らは幸せなのかな?せめて最後に…今から外に放してやった方がいいのかな?でも あっという間に捕食されちゃうかな?
と 色々考え、それを思わず昨日いらしたピアノの生徒さんに話したら、彼はしばらく考えて、
「本来はこのままにして 死んでしまったら埋めるのでしょうが、宮沢賢治の銀河鉄道の夜でしたか…サソリのお話もありますしね…」
「サソリのお話?」
「自分がイタチに食われそうになって 命からがら逃げ出した後、水に落ちて亡くなる時に思うんです。こんなに無意味に死ぬのならば、なんであの時この身をイタチにくれてやらなかったのか?って。そしたらイタチは一日生き延びられたのにって…。自然界では食物連鎖の一つになるのも ひょっとしたら幸せと言えば幸せなのかもしれませんね。」
「…。」
さて どうしましょうか…
そう言えば、今月21日は 賢治の命日。賢治忌ですね…
小さな虫ももちろんですが、私の周りには 本当に沢山の学ばせて頂くべき人がいらっしゃいます。
お日様も陰って来ました。本当ならもうそろそろ歌う時間です。
鈴虫は微かにギッギッと言ったきり…静かな夜です。
☆ 鈴虫の昨夜を終に鳴ききりぬ
2 件のコメント:
今日の俳句、とても味わい深いですね。
飼ってみると、何でも情が移りますね。私も、子どもと一緒にカナヘビ(とかげっぽいけど、つやつやしてない爬虫類)を飼ったら、すっかりかわいくなってしまいました。率先して生餌を探して、捕って、食べさせて、卵も孵しましたっけ(*^_^*)
makiちゃん、コメントありがとうございました!
おー!カナヘビ!先日 うちの玄関を開けたらポーチを横切る怪しげな影…あれってカナヘビかも…(^_^;) 卵まで孵すって 凄い!
昆虫を食すカナヘビも、百舌のはやにえで見かけることもありますし、厳しい自然界ですよね。
先日 とっても大きな熱帯の魚を飼育しているBARに行ったのですが、そのお魚は金魚を食べるんだそうな…
☆ 御器噛りにせめて綺麗な声あらば
って句を作ってみたのですが、同じような真っ黒い虫なのに 方や心配したり、方や追っかけ回したり…可愛がったり食したり…我々は矛盾の中に居りますね…(^^;;
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